舌下免疫療法とは…
アレルギーの原因であるアレルゲンを少量から体の中に入れることで、体を慣らし、症状を和らげたり、根本的な体質改善が期待できる治療です。
治療期間は3年~5年間で毎日、舌の下に錠剤を置き、1分間保持した後飲み込みます。
以前からある皮下注射の免疫療法よりも症状の強い副作用が非常に少ないということが利点ですが、自宅で行うため、服用量や方法、副作用の対応など、治療に対する患者さんの理解がとても必要となります。
適応となる人は…
現在はスギまたはダニのアレルギーを持っている方が対象で、5歳からできます。
原因となるアレルゲンを使うため、自分がどのアレルギーなのかを知る必要があります。
※問診と診察の後、採血をしてアレルギーの有無、IgE抗体の量を知ることができます。
アレルギーの薬を飲んでも効かない、薬を飲むと眠くなって困る、レーザーなど他の治療も試したけどダメだった、毎年花粉症の薬を飲み続けたくない、という方にもお勧めです。
スギの舌下免疫療法(シダキュア)
スギ花粉症と確定診断された方が行うことができる治療です。
スギの花粉が飛散している1月から5月は治療を始めることはできません。
治療開始から1週間は2000JAU(黄緑のラベル)を使用。
2週目からは5000JAU(青のラベル)を使用します。
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ダニの舌下免疫療法(ミティキュア)
ダニのアレルギーがあると確定診断された方が行うことができる
治療です。
基本的にできない時期はなく、いつからでも治療を開始できます。
治療開始から1週間は3300JAU(黄色のラベル)を使用。
2週目からは10000JAU(ピンクのラベル)を使用します。
期待できる効果は…
正しく治療が行われると、アレルギー症状を治したり、長期にわたって症状を抑えることができます。
臨床研究において、正しく服用している方に限り、2年目までに約80%で症状が軽くなったり、大幅な改善がみられました。
さらに10%の方は花粉ピーク時にもほとんど薬を使わずにすみました。
効果が実感できない方が10%でした。
鼻水、鼻づまりの改善 |
涙目、目のかゆみの改善 |
アレルギー薬の減量 |
生活の質の改善 |
舌下免疫療法を受けられない人は…
- スギやダニに対するアレルギーが検査で証明できない方
- 重度の喘息にかかっている方
- 高齢の方 65歳以上の方には慎重な判断が必要です
- 妊娠、授乳中の方 妊娠している方は新たに治療をスタートしないことが原則です
ただし、この治療を継続して行っているうちに妊娠がわかった場合には、そのまま治療
を続けることが可能です - 口内炎、歯科治療中の方
- 心疾患、高血圧のある方
- 全身性ステロイド、抗がん剤を使用している方
- 薬の管理や治療内容にご理解をいただけない方
内服方法
舌の下に錠剤を置き、1分間待った後に飲み込みます。
錠剤に味はなく、すぐ溶けていきます。
内服後、5分間はうがいや飲食は避けてください。
内服の前後2時間は激しい運動や、入浴、アルコール摂取は避けるようにします。
内服期間とスケジュール
副作用について
よくある症状(一般的な副作用)
- 口の中の腫れ、かゆみ
- 舌の下の腫れ
- 口内炎
- のどのかゆみ、イガイガ感
- 耳のかゆみ
など
これらの症状は服薬後から1か月以内に起こることが多いですが、程度も軽度で、次第に改善することがほとんどです。
スギの飛散時期などは症状が強くなる可能性があります。
抗アレルギー薬を併用して内服するなどで症状を抑えることができます。
重大な副作用
アナフィラキシー
ほとんど起こることはないと報告されていますが、緊急性が高く、救急車を呼ぶなど迅速な対応が必要となる症状です。
誤って大量に服薬した場合、基礎疾患があったなどの場合に起こることがあります。
アナフィラキシーの前兆
- 皮膚の症状…蕁麻疹、かゆみ、紅斑、発赤など
- 消化器の症状…胃痛、吐き気、嘔吐、下痢など
- 目の症状…視覚異常、視野の狭窄など
- 呼吸器の症状…鼻閉、くしゃみ、声がかれる、のどのかゆみ、胸のしめつけ感、呼吸困難、呼吸の音がヒューヒューする、チアノーゼなど
- 循環器の症状…頻脈、不整脈、血圧低下など
- 神経の症状…不安、恐怖感、意識の混濁など
服薬後30分間に起こることが多いため、注意が必要です。
よくある質問
シダキュアとミティキュアの両方を使うことはできますか?
スギとダニの両方のアレルギーがある場合、両方の治療を受けることができますが、同時に開始することはできません。
スギとダニのどちらから治療するのかは、患者さんのご希望と症状、始められる時期などを相談して決めるようにしています。
まず片方から開始し、安全に服用できると判断してからもう片方を開始します。
最低1~2か月くらいは単独での使用が良いでしょう。
今日の分を飲み忘れてしまいました
飲み忘れたことに気づいた時点で、本日分を内服してください。
今日飲んだかどうかわからないときは内服をしないでください。
飲んではいけない日はありますか?
熱がある時や、体調不良の時は避けてください。
どこで保管すれば良いですか?
室温で保存し、湿気を避けてください。
小さなお子様の手が届かないところで保管してください。
服用のタイミングは?
時間は決まっていませんが、服薬前後2時間は激しい運動、入浴、飲酒ができないので、生活習慣に合わせて決めると良いです。
治療効果はいつごろから出ますか?
一般的に免疫治療の効果は、3か月くらいすると出てくると考えられています。
しかし、効果の出方には個人差があるため、初めは効果の出にくい方もあきらめないでください。
約3年継続すると、その効果はその後も長く続くことがわかっています。
さらに3年より4年と、治療期間を長くしたほうが効果はより長く継続します。
服薬を中断する時や、再開はどうするのですか?
長期の海外出張や、留学などの場合は服薬を中止するほうが良いです。
海外でこの薬を使用して、副作用が出た場合、対応できるか不確実なためすすめられません。
風邪やインフルエンザなどで短期休薬した場合や、修学旅行、合宿などで一時休薬した場合はその後、継続可能と判断されますが担当医と相談していただくのが望ましいです。
他の薬は併用できますか?
特定の薬を除いて、特に使用禁止の薬はありません。
スギの舌下免疫療法をしている方でも、花粉の多い年や、飛散のピーク時、突然の大量飛散の場合、免疫療法だけでは症状が抑えきれない場合には、抗ヒスタミン薬や点鼻薬などの薬を併用します。
ただし、全身性ステロイド薬の使用中、悪性腫瘍の治療のための免疫治療を受けている場合などは使用できません。
★症状が急に変わることもあります。疑問な点や困った事がありましたら、なるべく早目におたずねください。